2年連続の入賞

娘とチームメイトたちの2019年団体演技シーズンが終わった。

地区大会での娘の体には、女性ホルモンの影響が最も悪い形で出現。
「全国大会ではこの女性ホルモンを味方につけるぞ!」
ピルによる月経コントロール開始。

ところが始めたタイミングが悪く、排卵直後なのに月経までくるというダブル負荷により、学校や家で5秒程度の意識喪失の頻発。
とはいえ、Tdpの時間が短くICDの作動はなく、全国大会前日に、最高のコンディションの一週間に持ち込むことができた。ふぅ。。。

全国大会の演技を母は
「これで娘の団体戦も最後か。。。」
と虚無感を抱きながら、指導者バッチをもらって、指導者が本来居るべきフロアから見た。

チームとしては見せ場でのドロップがあり、娘も最後に脚がもつれてドリルを乱してしまったけれど、娘はノードロップで締めくくることができ、チームも実に素晴らしい力強さや喜びが満ち溢れた演技を披露してくれた。観客席の盛り上がりがとにかくすごかった!

娘たちが退場して直ぐに退場口に駆けつけると、そこには汗だくで涙を流しながら「はあはあ」と肩で呼吸をして座り込み、けれど力強い目でメンバーの輪を見つめながら息苦しさと戦う娘がいた。
私は娘に駆け寄って、娘の心拍を確認しながら
「ふーって口から長く息を吐いてー。吸う時は鼻からね。はい、ふーーーーー。。。ふーーーーー。。。」
と呼吸を誘導し、副交感神経を優位にすることで心拍数が落ち着くように促しながら、自分のタイミングで酸素を多く取り込むように酸素ボンベを手渡す。

演技終了から6分ほどで期外収縮も消え、歩けるようになった娘は、先に選手席に戻りかけていたメンバーを追い掛けながら、満面の笑顔で
「やっぱりフロアーは気持ち良い!」「サイコー!」「快感!」
と興奮を見せる。

私「力、出しきれた?」
娘「うん!出しきった!」
私「それなら良かった!演技も良かったよ!」
と話しながら歩く。

症状が落ち着いたことを認めて、指導者に娘をお願いして、私は自分の座席に戻る。途中、何度も泣きそうになりながら。

表彰式。
入賞しなかった団体名が先に「優秀賞」として呼ばれる。そこに娘たちのチーム名はなかった。「お!8位以内だ!入賞だ!」心が踊り、胸が熱くなり、また泣きそうになりながら、下位から順に発表されるアナウンスに聞き入ると、地区大会で上位にいたチーム名が先に呼ばれる。

そして娘たちのチームの名前を読み上げるアナウンスが会場に響き渡り、近くにいたメンバーのお母さんたちと「やったー!」「イエーイ!」「すごーい!」とハイタッチをして喜び合いながらまた泣きそうになった。
「娘、頑張った!みんな、よく頑張った!娘を支えてくれてありがとう!」
そんな気持ちでいっぱいだった。

打ち上げの会場に向かう道すがら、指導者のお一人に「娘、やっぱりまた団体戦出たいってさぁ~」と笑顔で話しかけられる。
私「えー?!あははっ!ま、苦しさから解放されて直ぐに”フロアー気持ち良い!最高!”って言ってましたからね~。もー!振り回してくれるなぁ~!あはは!」
指導者「あはっ!ほんとね~」
私「あの子、"360度、人が見てるんだよ?自分たちの演技をさ!最高じゃない?だから最高の演技を見てほしくなるじゃない?"とか"フロアーに出ると気持ち良くなっちゃって~"って、いつも言っていますからね~」
指導者「あ~、娘らしいね~」
なんて笑い合いつつもまた泣きそうになる。

4日後にはまた、運動負荷心電図の検査。
期外収縮を止めるために、アブレーションをして欲しいと医師にねだり続けている私たち母子。娘が手術を受けたのも、デバイスを入れたのも、もっと治療を進めて欲しいと願うのも、その原動力は
「もっとバトンがやりたい!」
「まだ死ぬ訳にはいかない!」
それだけ。

打ち上げの席にて、メイン指導者にお礼を告げに行くと
「お母様もお父様もいつも練習に付き添ってくださって本当に有り難うございます。あの子も最後まで演技してくれて有り難うございます。あの子が踊りきれたことが私にはとても嬉しいし、あの子は本当によく頑張りました!私はあの子のことを思うともうね、」
と声を詰まらせ、続けて
「あの子がバトンをすることで健康な体になる何かになってくれたらと思っています。」
と仰ってくださる。
私「先生があの子にバトンを続けさせてくださることに心から感謝しています。本当にありがとうございます。」
と伝えて頭を下げる。

そして帰りの車の中、
私「ま~た団体戦に出たいんだって~?(笑)」
と話を振ると
「うん!出たい!出る!」
と満面の笑みで応える娘。


バトンに出会えたことが、娘をこんなにも輝かせてくれる。
娘の疾患とバトンに、私の心も生活も振り回されているのは確かだけれど、私はこの揺さぶりを喜んで受け入れている。
父親も惜しみ無く協力してくれている。
妹も「一人の時間を楽しんでいるから、私のことは気にしないでいーよー」と明るく言ってくれる。本当に有り難い。

娘が自分の疾患を受け入れ、それを抱えながらでも明るく生きる力を与えてくれるバトン。娘の体のことを気に掛け支えてくれるメンバーのみんな、指導者の皆様、保護者の皆さまに、感謝が溢れた今日という1日でした。


後日、クリスマス会での10年表彰。
「もう10年かぁ・・・と。あははっ!私はバトンが好きなので、先生方や家族にまだまだご迷惑もご心配もお掛けすることと思いますが、バトンを続けさせてくれてありがとうございます。」と挨拶をする娘。

誰も迷惑だなんて思っていないさ!
心配するのは母の役目だよ!
あなたが日々をイキイキと笑顔でいてくれることだけで十分。そのために出来ることがあるのは母としてとても幸せなことなんだから。
娘の挨拶を聞きながら、涙が滲むのでした。

今年は家族の再編もあり、私のけがもあり、本当に忙しい日々だったけれど、あなたの母になれたことに、やはり母は感謝しかありません。

QT延長症候群2型の娘のこと

13歳にて遺伝子検査により先天性QT延長症候群の診断がおりた娘の治療や生活について載せています。 致死性不整脈の1つ、突然死の原因となる【先天性QT延長症候群】。 厚生労働省の難病指定から外れましたが、完治することのない病気です。 5歳から始めたバトントワーリングというスポーツでは、選手として活動してきました。 治療により体調や日々の生活に大きな影響があります。 それでも毎日を元気に生きています。

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